ハーフェズ〜ペルシャの詩〜
イランの映画を観に行った。
昨年から弾き語りに少し傾倒しているせいか、
「4分間のピアニスト」、「僕のピアノコンチェルト」と、
立て続けにピアノの映画を観に行っていて。
どちらも名シーンは、ラストシーン。
「超えた音」というのはこういうことか...という最終場面だった。
「僕のピアノコンチェルト」を観た時の予告で、繰り広げられた映像に心を奪われた。
一面の砂漠。
褐色の肌と長髪の男性。
ヴィヴィッドな民族衣装に楽器。
高らかなコーラン。
そこに麻生久美子さん扮するチベット人女性。
映像の美しさ、コントラストが見事で、ああこの世界観はとても好きだと思った。
それが、この「ハーフェズ ペルシャの詩」だった。
イランと聴くと、日本人はまず「怖い」、「危険」というイメージが強いと思う。
でも女の子には魅力的に映るものがたくさんある。
ペルシャ絨毯や更紗、バラにサフランにザクロ。そして香り高い紅茶。
私の幼少期は中国やマレー同様、イスラム文化も身近にあった。
大きなモスク。夕方に聞こえてくるコーラン。
木彫りのコーランを置く台や、ペルシャの香水の瓶は宝物だった。
ホテルの部屋の角にある聖地メッカを指す「KIBLAT」と書かれた矢印とか。
私はピアノを色々な人種の先生に習った。
いわゆるバイエルというのものはやっていなくて、イギリスの教科書がほとんど。
中学に入った時に、インド人の男の先生に付いた。
とても厳しい先生でよく手を叩かれた。
口も悪くて、私はあまり好きな先生ではなかったけれど、
その先生が紹介してくれる楽曲は、とても魅力的な物が多かった。
中でも印象に残っているのは、「In a Persian Market」という楽曲。
「剣の舞」の様なエスニックなイントロで、大好きな曲だった。
お客さんが家に来ると、必ずこの曲を弾いた。
日本に帰国する時にほとんどの楽譜は捨ててしまったのだけど、
この楽譜だけは持って帰って来た。
インドやパキスタンで着られるシャルワール・カミーズという
民族衣装があるのだが、女性用はカラフルなものが多くてファッショナブル。
昨年の10周年記念のライブで、私が1セット目に着たブルーの衣装がそれ。
男性ものはイスラム圏で着られるので、イラン人もよく着ている。
白いものが多いが、男性の褐色の肌によく映える。
そこに来て、この「ハーフェズ」である。
「ハーフェズ」とは、コーランを暗唱する人のこと。
イラン版ロミオとジュリエットという設定の映画らしいのだが、
主人公の男女の接触はほとんどない。
顔を見合わせられない二人は、コーランを詠む「声」に恋をしてしまう。
全編的に言葉が少ない。静寂のシーンが多い。
でも語られるのは、とても詩的な言葉。
ストーリーの展開が早いのに、印象に残るのは始終「砂漠」。
見終わった時に思ったのは、「笑顔」がない映画だったということ。
宗教的な縛りのせいか、恋を表現するのはあれが精一杯だったのかと
思うほどプラトニックで、それが却って想像を膨らませる。
よい映画というのは、「余韻」がある映画だと思うのだが、
とても美しい映画だった。
鏡の上に置かれたザクロの赤が、今も鮮明に残る。
興味深かったのは、映画が終わった後の客席の反応が物凄く複雑そうだったこと。
理解しようとすると、日本人には解釈が難しい映画かもしれないなあと思った。
上映されているのは、恵比寿の「東京都写真美術館ホール」。
美術館で上映されているという点も素敵。
たくさんの洋服や装飾品は、生きて行く上であまり必要ではなくて、
大事なのは「心の在り方」であるという事を気付かせてくれるシンプルな作品でした。