録音初日終了。
1回目のレコーディングが終了しました。
結果は、ヴォーカルは惨敗。
あまりのハードスケジュールに体調コントロールが上手く行かず、
本来の声が出せませんでした。
録リ直しです。
ただヴォーカリストとしては失敗でしたが、
プロデューサーとしては、ピアニストの良い音だけは確保出来たので、
それだけは良かったです。
というのも。
あまり録音内容の種明かしをするのはどうかと思いますが、
一般的に、特にポップスの場合、オケを先に録って、
ヴォーカルは後からかぶせるというやり方がほとんどです。
しかし私の場合、1stも2ndアルバムもいわゆる一発録り、英語では"live recording"、
つまり楽器と一緒にライブで録音する方法を取って来ました。
これは私が元々ジャズ出身で、ミュージシャンもジャズの心得がある人が多く、
「バックバンドとヴォーカル」という形にならないように、
「楽器との調和」を基本に歌う事を大切にしているためです。
しかしヴォーカリストとしては、最も技量が試される方法です。
全楽器の演奏、全てに耳を澄ませて、自分の歌い方を決める、
しかも「歌詞」がきちんと聴き手に伝わるように歌う。
冷静さと、相当のコントロール力が必要になります。
今回はジャズアレンジだったので、尚のこと。
くやしい。反省です。
アルバム全体のプロデューサーは私ですが、
各楽曲の方向性を指示するプロデューサーは居ます。
その曲のアレンジャーが兼務しています。
録音に入る前に「今日はどうするか。」と聞かれました。
「ファイナルテイクにするつもりで、臨みます。
しかし良ければの話です。ダメだったら録り直しさせて下さい。」と、
既に本調子でない事がわかっていたので、正直に伝えました。
2度録って、ああ今日はダメだなと判断しました。
プロデューサーに「sachiyo、どうだ?」と聞かれたので、
「ごめんなさい。今日はダメです。私の歌はここで終えたいと思います。
ピアノの音づくりに集中しましょう。」と答えました。
こういう時は割り切りが肝心です。
自分の良い音を追求したいという我を通して、
ピアニストの音まで損ねてはプロデューサーとしては失格です。
しかもジャズアレンジだけに、呼んでいるのはジャズピアニストです。
彼らは一発入魂タイプのミュージシャンなので、
士気が下がらない内に良い音を録っておかなければなりません。
しかし楽曲プロデューサーの試合運びは見事でした。
ピアニストのモチベーションが上がる言葉選び、具体的な指示、
明確なゴールに向かって、着々と音を作っていきます。
そして、箇所箇所に応じて、必ず私に最終決断をさせます。
"Acceptable?"(受け入れられるか?)と。
こういう場合、最もいけないのは、まごつくことです。
「OKです。」わからなければ、「もう一度聴かせて下さい。」など、
即時に、そして明確に答える事が鉄則。
私の音楽を尊重してくれているが故に聞かれる質問に対して、
わかりやすく答える事が最低限の礼儀です。
それだけは何とかやれました。
ピアノの音がみるみる高揚して、すばらしいソロが録れました。
この日の最高の目標値には行かなかったけれど、
まずはやっておかなくてはならない事は時間内に終えられました。
録音ブースから出て来ると、一番近しいスタッフに、
「全員ヴォーカルはいいと言ってたよ。ダメなの?」と聞かれました。
曲は悲しい内容だし、歌い上げるよりはさらっとカジュアルに歌った方が
いい歌なので、雰囲気的には丁度良かったのかもしれません。
しかし、自分の最も良い声を知っているのは、他の誰でもない私自身で、
私がNoである限り、Noなのです。
「うん。残念だけど、今日はここでやめとく。」と答えました。
この日は、もう1人別のピアニストにも入って頂いて、もう1曲録りました。
しかし歌はピアノのガイドラインとして仮入れするのみで終了しました。
少し自分に甘い発言をするとすれば、
シンガポールでの初めてのレコーディング。
基本的な事は同じでもやはり日本とは進行方法が違います。
勝手がわからない、全てが英語の専門用語で進行する。
ヴォーカリストとプロデューサーとしてのプレッシャー。
大変な緊張を伴いました。
2曲とも、その日のやるべき事を時間内に終えた、
というだけでも成功かもしれません。
しかし私はやっぱりもっと上を目指したい。
この日出来なかった事は、もう2度とやらないようにしよう。
方法は理解したので、次回はもっと積極的に指示しよう。
私は、かなり甘ったれな性格ですが、
こと音楽に関しては、スーパー硬派、そしてドMです。